教育
在学生インタビュー2024
社会人のリスキリング(学びなおし)への注目度が高まる中、忙しい社会人はどのようにリスキリングをしているのでしょうか。仕事との両立や、再び大学に通う事による発見など、リスキリングを行う大学院生4人と共に学びなおしのリアルについて語り合いました。
2024年10月18日に実施した座談会「社会人院生の履修実態に迫る!」の模様をお伝えしています。大学院進学を検討される社会人のみなさまが気になる情報をお届けします。
池島:池島祥文先生(横浜国立大学大学院国際社会科学府経済学専攻教授)
院生A:博士課程前期2年(消防局勤務、地方財政のゼミ所属)
院生B:博士課程前期2年(農業法人勤務、農業政策のゼミ所属)
院生C:博士課程前期1年(金融業界勤務、地域経済のゼミ所属)
院生D:博士課程前期1年(独立行政法人勤務、公共政策のゼミ所属)
池島 | 皆さんが大学院に入った理由と、現在研究しているテーマは何ですか?また、大学院で学ぶ中で感じる学部との違いがあれば教えてください。 |
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院生A | 学位を取るために大学院に入りました。消防局で仕事をしている事もあり、救急車の需要を減らす研究をしています。学部と大学院を比べると、大学院では勉強内容を自分でアレンジできるところが良いですね。 |
院生B | 農業法人での勤務が9年目に入ったのですが、仕事では農業の現場の声を聞く事がほとんどで、色んな人から多種多様な意見をいただいてきました。これらの情報を、学術の面から理論的に整理したいと思い、大学院に入りました。研究では農地取引の特徴を、社会ネットワーク分析を用いて明らかにしたいと考えています。学部と比べると、大学院は少数精鋭かつ議論が盛んにできる所が魅力に感じています。 |
院生C | 私は金融系の会社でIT職として入社したのですが、現在はITではなく自治体向けの仕事を行っています。仕事の領域が変わって、現在の仕事に関する知識が全くないので、知識を増やすために大学院に入りました。その中で観光関連の仕事もしているので、研究テーマは観光の地域経済効果です。それがお客さんの役に立つ事に繋がれば良いなと思っています。 |
院生D | 貿易関連の仕事をしているのですが、業務をする中で日本のプレゼンスが落ちていると感じており、その打開策となる政策提言をできるようにするために大学院に入りました。ですので、大きな研究テーマとしては政策提言がありますが、今はEVへの補助金の効果を具体的な研究テーマとしています。 |
池島 | 次は受講の様子を聞きたいと思います。社会人は忙しいかと思いますが、その中でどのように時間を確保して勉強したり大学に通ったりしているのでしょうか?具体的には、対面とオンラインそれぞれ週何コマぐらい授業を取っているかなどお聞きしたいです。 |
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院生B | 週に対面とオンラインそれぞれ2~3コマずつ取っています。対面で議論したいため、対面の授業を多めにしています。1年生の春学期は対面2オンライン4の計6コマ取っていました。また、私は職場の派遣制度は利用せず個人的に大学院進学したため、仕事量を減らすことなく、平日の夜と休暇取得を使って勉強しています。 |
院生A | 私は2年間ではなくもっと年数をかけて修了する予定で、単位取得は余裕をもって進めています。1年生の時は対面3オンライン1で、週2日大学に通っていました。このオンライン1はオンデマンド授業で、いつでも授業動画を見ることができました。2年生の春学期は時間の余裕があったので、対面の授業を4コマ取りました。勉強時間は朝と空きコマを利用しています。ちなみに仕事と研究の内容がかなり被っているので、仕事が研究になっているような所はありますね。 |
院生D | 私は3年間で博士課程前期を修了する予定で、現在は1年生ですが、春学期秋学期ともに3コマ位取っています。大学に行くのは週1回あるかないかです。 |
池島 | ちなみに大学までの移動はどれ位かかっていますか? |
院生D | 家から大学は片道2時間位かかります。職場から通う事もありますが、職場からも2時間位はかかります。ちなみに、通学時間は長いですが、リスキリング対応があることとオンライン授業に魅力を感じて入学しました。通学時間は勉強に当てることもできるので、そこまで苦には感じていないです。 |
院生C | 私は2年間で博士課程前期を修了したいと考えていて、春学期は対面2オンライン5、秋学期は対面2オンライン2です。忙しいですが柔軟に対応してくれる先生も多く、相談すると対面の授業をオンライン形式にしてもらったりもできました。実際に大学に通うのは春学期秋学期ともに週2回ですね。 |
池島 | オンライン授業を多くとっている方もいらっしゃいますが、オンライン授業ならではのやりにくさはありますか? |
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院生B | オンデマンドだと大丈夫なのですが、リアルタイム配信の場合は少し聞きづらい場合があります。 |
院生A | 私も同様で、教室からの配信だと授業を受けづらいです。なので、対面を多くとるようになりました。 |
院生C | 私もお2人と一緒です。画面共有だと授業スライドが見やすかったのですが、黒板とかスクリーンをビデオカメラで撮って配信する場合は見づらかったです。 |
池島 | 皆さんからのお声を聞けて良かったです。教員として工夫します! オンデマンド授業の話もありましたが、仕事終わりの夜に勉強することが多いのですか? |
院生B | 私は仕事を定時で切り上げて、なるべく早い時間に勉強時間を確保しています。 |
院生D | 夜に勉強する事もありますが、正直眠くなります(笑)。 |
池島 | 時間の確保の難しいとの声は先ほどから上がっていますが、大学院に通っている中での悩みはありますか? |
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院生D | やっぱり時間の管理は難しいです。正直解決策はないです(笑)。スキマ時間を使ったり、通勤時間に勉強したりしています。 |
院生C | 私も時間の確保が大変です。やっぱり仕事が優先ですが、今は忙しい状況で(笑)。先に仕事を片付けないといけないと思っています。ですが職場の人達の理解はあって、勉強も仕事の一環として扱ってもらえています。 |
院生B | 私の場合、最初は職場の人達の理解があまりなく、疑問に思われていました。ですが仕事に支障がないように仕事のやり方を変えて、大学院に通えるように調整しました。入学後も職場にいない時間やタイミングに驚かれることがありましたが、周りもだんだん慣れてきて、今はあまり問題なくやれています。 |
院生A | 職場との兼ね合いですが、職場は研修等を行う人が多く、私の大学院進学も問題なくできました。私の大学院進学を知っているのも上司と人事ぐらいです。また、時間の確保ですが、社会人生活で時間管理能力を身に着けたので、段取りを立ててこなすことができています。悩みとしては、入学前は周りについていけるかが心配でした。ですので、入学前から担当になる先生と細かく相談して、大学院生活をうまく進められるか、入念にすり合わせをしました。 |
池島 | ちなみにどれくらい検討期間を取ったのですか? |
院生A | 2年間くらいです。やりたいと思い立ってからどこの大学に行くのか、何を学ぶのかの決定までが2年間ですね。 |
池島 | これが最後の質問になります。大学院で何を得られると期待しているかお聞きしたいです。 |
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院生B | 自分への期待として、物事を理論的・俯瞰的に整理できるようになりたいです。仕事場は現場主義ですが、新しいことを生み出すためには俯瞰的な視点が必要だと思っているからです。 |
院生C | 私はとにかく知識が足りていないので、勉強をして知識を蓄積したいと思っています。周りの院生ですごく勉強している方もいるので、刺激をもらいながらやっています。 |
院生D | 大学院特有の、仕事では得られない知識を、先生から学びたいと思っています。特にデータサイエンスの分野を学び、仕事に活かしたいと思っています。 |
池島 | ありがとうございました。次にですが、オンライン参加者からの質問も受け付けたいと思います。オンライン参加している方で、質問がある方はいらっしゃいますか? |
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E | 学びを進める中で、新しいビジネスの発案など、仕事へのヒントになったエピソードはありますか? |
院生C | まだ具体的なエピソードは無いですが、普段会社では関わらないような方と交流できるので、そこからヒントを得られるような気がしています。 |
院生B | そういえば、リスキリングの社会人同士でLINEグループ作りましたよね。 |
院生A | 作りましたね。社会人は少ないですし、私は大学院が交流の場になるとは思っていませんでした。ですが交流できて楽しいですね。ゼミでは先生や留学生と話すことが多いですが、確かに職場では関わらない人達です。また、他の学部も面白い授業があって、色んな知識を吸収できています。 |
F | 自分の研究と担当の先生の専門分野の違いについて質問したいです。私は研究したいテーマが決まっているのですが、そのテーマを扱っている先生がいるかわかりません。いない場合、私の研究テーマを扱っていない先生の下でも研究できますか? |
池島 | 教員としては「できます」という回答になりますが、社会人のみなさんはご自身の体験からどうですか? |
院生A | 分野がずれていても先生とのマッチングが上手く行っている方は多い印象です。ですが、予め先生との調整が重要で、その中で判断していくのが妥当だと思いますね。 |
F | 過去にも経済学を学んでいた経験があるのですが、その際に上級ミクロや上級マクロで挫折しており、勉強についていけるか心配があります。大学院の授業の難易度はどれ位のレベルですか? |
院生A | 大学院の授業はレベルが高いですが、研究分野や勉強したい分野に合わせて履修しますので、研究に必要であればいずれ勉強しますし、授業はついていけると思います。 |
G | 皆さんは、博士課程後期への進学は検討していますか? |
院生A | 博士課程後期も修了して、博士号を取ることを目標にしています。 |
院生B | 博士課程後期のリスキリングも2024年度からスタートしたので、ちょっとはやってみようかなと考え始めています。 |
院生C | 現在は仕事との両立が課題なので、それが解決できれば博士課程後期もありかなと思っています。 |
院生D | 今は考えていないです。現在実施している研究の経験を仕事に活かすことが目的なので。 |
池島 | それではお時間が来ました。皆さんご参加いただきありがとうございました。 |
座談会では、率直なご意見がうかがえました。教員と大学院生とともに、よりよりリスキリング機会を提供していこうと考えています。ぜひ、積極的な学び直しに取り組んでみてはいかがでしょうか!?