教育

「社会人院生の研究進捗は如何に!」
横浜国立大学大学院
国際社会科学府経済学専攻

リスキリングのために大学院に進学した社会人はどのように研究を進めているのでしょうか。仕事との両立に苦労する様子が垣間見えつつも、そのなかで、修士論文の提出にむけて取り組む大学院生、さらには、今後の論文執筆にむけて奮闘している大学院生のリアルな声を紹介します。
2025年10月31日に実施した座談会の模様をお伝えしています。大学院進学を検討される社会人のみなさまが気になる情報をお届けします。

登壇者紹介

池島
池島祥文先生
(横浜国立大学大学院国際社会科学府経済学専攻教授)
院生A
博士課程前期2年
(農業法人勤務、農業政策のゼミ所属)※長期履修制度による在籍3年目
院生B
博士課程前期2年
(消防局勤務、地方財政のゼミ所属)※長期履修制度による在籍3年目
院生C
博士課程前期2年
(金融業界勤務、地域経済のゼミ所属)
院生D
博士課程前期2年
(独立行政法人勤務、公共政策のゼミ所属)
院生E
博士課程前期1年
(IT業界勤務、産業連関分析のゼミ所属)

今年度修士論文を提出予定の皆さんにお聞きしたいと思います。修士論文のテーマ設定の経緯や、苦労した点を教えてください。
私は農地取引のメカニズムをテーマに研究を進めているのですが、働いている中で出た疑問がきっかけです。農業現場でよく言われることが、実際にはどうなっているのかを明らかにしたいと思い、この研究を始めました。苦労したところは、先行研究が少ないことや、もともと集めたかったデータが取れなかったことです。現在は、研究方針を修正しながら取り組んでいます。
職場で問題になっている救急車の出動件数を、経済学の知見でどうにかできないかという気持ちがあり、救急車の出動件数に関するテーマで研究を始めました。しかし、考慮すべき問題が多く、なかなか「これが最適だ!」と断言できないのが難しいところです。
私のテーマはオーバーツーリズムなのですが、もともと観光に携わる方と仕事することが多く、観光業の方向性に興味を持って研究を始めました。ただ、指導教員にビジネスと学問で求められるものが違うと指摘されており、そのギャップが私の中で難しい点でした。
次は、今年度の修士論文提出者ではないお2人に聞いてみたいと思います。現在の研究の進捗状況に対する自己評価を教えてください。
まだまだ勉強中で、先行研究の整理にもまだ手を付けられていません。なので、点数でいうと30点くらいですかね(笑)。皆さんの研究に刺激を受けていて、自分も頑張らなきゃいけないなと思っています。
担当教員がスピーディーに進めていくタイプで、そのおかげで何とか進められてきました。学会発表をやることになって、沢山やることがあったのですが、それなりに頑張れたので75点くらいは付けたいです。
社会人における研究の楽しさや、リスキリングならではの良い点はありますか?
私の場合、仕事で根拠やデータに基づいて伝える難しさの壁にぶつかっていたのですが、大学院で勉強を進めたことで、職場に戻ったときに、これまでより効果的に伝えられるようになったことが楽しいです。
私は自分の仕事のことをテーマにしているので、仕事と研究を結び付けて考えられるのが楽しいです。また、職場の課題を俯瞰して捉えられるようになったことで、新たな気づきが生まれて面白いです。
学部時代と違い、仕事で相対している方がいるので、その人にとっても面白い研究ができればいいなと、顔を浮かべながら研究できるところは楽しい点かなと思います。あとは、会社が使用している特別なデータを使えるところや、良い分析環境を用意してもらえるところは会社に所属しながら研究する特別な点かと思います。
学会に行ったときに、大学の研究者以外にも、シンクタンクの方や民間企業の方がいらっしゃったのですが、リスキリングは社会人と研究者の中間の立場なので、どちらの意見も理解して対話できるところは社会人の経験が活きていて良かったなと思います。
自分の仕事と離れている分野の授業を履修した際、例えば、今まで全く知らなかった計量経済学やプログラミングツールのことを知れて、日常生活では味わえない発見があって楽しいです。
リスキリングで「学んでおいた方が良い!」っていうものがあれば教えてください。
本を読んだときに「こういうところが足りないんじゃないか」といった視点を持っておくと、興味が広がっていくので、リスキリングがより楽しくなると思います。
仕事などの場面で、みんな言っていることが本当にそうなのか?と物事を考えることは大事だと思っています。それが実際に研究につながっていくので、一歩引いた視点を持っておくと良いなと思います。
社会人で仕事や家庭があると忙しいので、独学だと「今日はいいかな」と切り上げちゃうことがありますが、大学院に入ることで、指導教員とのやり取りがペースメーカーになると感じています。そういった伴奏をしてもらうような存在として、社会人にとって大学院というのはいいんじゃないかと思います。
それぞれありがとうございました。研究の進捗状況については、まだこれからラストスパートを迎える段階なので、伸びしろを感じつつも、論文としてまとめられるよう取り組んでいただければと思います。また、その過程で、苦しみながらも研究の楽しさ、リスキリングとしての意義をみなさん感じていることに、教員として、改めて学び直しの良さであると思いました。

2025年度の座談会では、社会人院生がどのような研究に取り組んでいるのかを紹介していただきました。限られた時間のなかでも、社会人ならではの視点や資源を用いて、研究に取り組んでいる姿勢は頼もしい限りです。進学を悩んでいる社会人のみなさん、ぜひ、積極的な学び直しに取り組んでみてください!

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