教員紹介

世界の大豆需給構造をフードレジームの視点から解明

2024年5月2日

 張馨元准教授は、『大豆の政治経済学――フードレジームの視点から』(八木浩平・林 瑞穂らと共編著)と題する学術書を出版しました。この書籍で、張准教授らは、東アジアの主要国における国家、企業、農家といったアクターの行動を分析することで、世界の大豆需給と貿易構造の変化を明らかにしました。

 本書は、東アジアとブラジルを中心に、1960年代以降の世界における大豆の生産、貿易、加工などをめぐる経済活動について、フードレジームの視点から分析した研究書です。食料の生産と貿易に関するデータが豊富に存在するにもかかわらず、これまでのフードレジームに関する議論は、データを重視するものが少なく、関連する研究の多くは定性的な説明に留まっています。本書では、世界の食料需給予測データ、貿易統計、各国の政府や企業が現地語で発表した統計や報告書、さらには独自のアンケート調査の結果も活用し、大豆経済の構造的変化を解明しました。本書で行った分析により、世界の農業・食料に関する政治経済学の発展に、次のような知見が提供されました。

 まず、大豆供給国であるブラジルに関する分析からは、同国における大豆生産の規模拡大が1960年代以降のことであり、生産者が自ら国際市場における需要拡大の機会を掴み、大豆を増産してきたことが明らかになりました。

 また、東アジア においては、日本、韓国、台湾、中国の大豆経済に関し、それぞれの国の経済成長期に、植物油及び飼料用大豆ミールに対する需要の増加、大豆輸入量の拡大、国内の大豆生産規模の縮小という 3 つの変化がほぼ同時に現れたという点が示されました。一方で、東アジア各国における大豆とその加工品の貿易構造には明確な相違があります。そこには、東アジア各国の政府が大豆とその加工品に対する輸入規制を緩和または撤廃したうえで、国内外の資本の力を借りながら、大豆の安定的な確保体制を築いてきたという背景があることが明らかにされました。

書誌情報

張馨元, 八木浩平, 林瑞穂編著(2024)『大豆の政治経済学――フードレジームの視点から』筑波書房。
ISBN: 9784811906744
NCID: BD06382244 新しいウィンドウが開きます


研究者情報
張 馨元 :研究者総覧 新しいウィンドウが開きます